無能な同僚にウンザリ

  会社という場所には、いろんな人間が棲息してい
 ます。尊敬できる人もいれば、能力や人柄に疑問を
 抱きたくなる人もいるでしょう。「無能な同僚」に
 ウンザリさせられたり、具体的な被害を受けたりと
 いった悩みは、いわば会社生活の宿命。どう立ち向
 かっていけばいいのか、そのコツを模索してみまし
 ょう。

  一昨年、一部上場のメーカーに就職した25歳の男
 性。仕事にはやりがいを感じているものの「上司・
 先輩に盗むところがない」ことが悩みだとか。漫画
 家の弘兼憲史さんは、相談者が非常に優秀なんだっ
 たら、ほかの部署も見渡して「あ、この人には勝て
 ないな」と思える人を見つけるのはどうかと提案し
 ています。そうじゃないと仮定した場合のアドバイ
 スは、以下の通り。

      … … … … … … … … … … … … …
      もうひとつ、考えられることは、それはキミが自分の力
      を過大評価しているケースだ。(中略)僕がまだ新人の
      漫画家だった頃、自信を持って描いた絵コンテを担当編
      集者にみせたところ、あれこれ問題点を指摘された。そ
      の時、鼻っ柱の強い僕は、この編集者は“わかっていな
      い”と思っていたけど、、今になってその作品をみると、
      まさに編集者の指摘してくれた通りだったというのがよ
      くわかって、忸怩たる思いをしている。実力のないヤツ
      に限って、自分の実力を見極めることができないものだ。
      そのへん冷静に考えて、もう一度自分を客観的に見てほ
      しい。〈PHP研究所『「人は人、俺は俺」でいいじゃ
      ないか。愛と勇気のビジネス人生相談』より〉


  周囲の無能さにウンザリしたくなるのは、自分が
 無能だからという怖い可能性もあるようです。不安
 や自信のなさが、周囲への不満の原動力になってし
 まうケースも、きっと多いでしょう。

  新しく入ってきた40代のパートさんが仕事の覚え
 が悪く、同じ失敗をしたり、何度も同じ説明をさせ
 られたりしてウンザリしているという26歳の女性。
 診療内科医の海原純子さんは、「なんでも自分の思
 いどおりに動いてほしいという、脚本家思考をして
 いると、ちょっとしたことがストレスになります」
 と言いつつ、こんな対処法を示します。

      … … … … … … … … … … … … …
      たとえば植物に向かって「あした花を咲かせてほしい」
      と言って、そのとおりにならなかったとしても、怒る人
      はいないですよね。人間もそれと同じ。(中略)「そう
      いう人なんだ、しかたないな」と思って、それ以上のこ
      とを期待しないこと。彼女は彼女なりのペースで仕事を
      覚えていくはずですから、そのうち聞きに来る回数も減
      るでしょう。〈主婦の友社『OLのオシゴトの悩み解決
      マニュアル』より〉


  他人は自分の思い通りには動いてくれないもの。
 つい自分で勝手に描いた「脚本」を押しつけたくな
 るけど、それは自分にとっても押しつけられた相手
 にとっても大きなストレスになる、とも言っていま
 す。

 「自分で言うのもなんだけど仕事はできる方」で、
 同僚や後輩の仕事ぶりを見ているとイライラしてつ
 い口を出して煙たがられるというOL。人材教育の
 塾を主宰する今井登茂子さんは、自分を引き合いに
 出しながら、こう答えます。

      … … … … … … … … … … … … …
      私に関していえば、よく人から頭の回転が早いといわれ
      るんですね。そのためかまわりが付いてこられないとイ
      ライラしています。だからまず自分が頭の回転が速いこ
      とを客観視して、良いことだと誉めます。その次に自分
      の駄目なことはと考えるの。(中略)すると私にないの
      は忍耐力だと。(中略)客観視しながら自分の欠点を上
      手にのりこえていくこと。そういう意識がないと、いつ
      まで経っても今の悩みから抜け切れず、何度も何度も同
      じ所に戻りますよ。〈講談社『FRAU』2008年2月8日号
      「あらゆる「悩み」にケリをつけるQ&Aブック」より〉


 「仕事ができる」というのは確かに長所かもしれませ
 んが、イライラして口を出さずにはいられないのは立
 派な短所です。都合の悪い部分から目をそらしながら
 周囲を見下すのは、あまりフェアではないと言えるで
 しょう。

 「職場の人たちのちょっとした言葉や態度に対して過
 敏に反応してしまう」という25歳の女性。いつも不愉
 快な状態から抜け出したいという切実な叫びに、吉本
 ばななさんは、箇条書きでこんなアドバイスを贈りま
 す。

      … … … … … … … … … … … … …
      (1) まず、自分がそこにいるから不満があるのか、どこ
      へ行っても今調子が悪くて不満を持ちそうなのかちゃん
      と見つめること。もし、「そこにいるから」であれば、
      やめちゃいなさい。(中略)(2) もしかしてあなたがい
      やな人は、1人なのでは? その人を中心にその人をひ
      いきする上司、ひいてはその人とかかわる自分をもいや
      になっているのでは? その人と具体的に離れられるか
      を考えてみては?(部署を変わるとか)〈角川書店『B級
      BANANA ばなな読本』より〉


  確かに、まずは原因がどこにあるのかをハッキリさ
 せないと、対策の取りようがありません。実際は、そ
 こをないがしろにして、ひたすらイライラやウンザリ
 をふくらませているケースも多そうです。

 □■ 石原の結論!

 「無能な同僚」にウンザリするのは、有能な人の専売
 特許ではありません。客観的に見て無能な部類に入る
 人でも、その気持ちを抱いている人は少なくないはず。
 また、周囲に対していつもウンザリしたりイライラし
 たりしている人が、本当に有能と言えるのかどうかも、
 議論の余地があると言えるでしょう。

  どうやら「ウンザリ」のタネは、いろんなところに
 潜んでいるようです。ウンザリすることによって、自
 分が「有能な側」に入っている気になれたり、自分の
 力不足から目をそらすことができたりというメリット
 もありますが、それはあまりカッコイイ構図とは言え
 ません。どんな種類のタネだったにせよ、どうすれば
 取り除けるかを考えて、果敢に立ち向かったほうがは
 るかに有意義です。

  どう考えても、ウンザリの原因が相手や周囲の無能
 っぷりにあるとしても、そこで素直に「ウンザリの誘
 惑」に身を任せてしまうのは、大人としてやや安易か
 も。どうすればウンザリを減らせるかを考えて、でき
 そうな手を打ってみましょう。それが大人の粘り腰で
 あり、無能な同僚から受ける被害を最小限に抑える大
 人の生活の知恵に他なりません。

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